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コラム

子どもの好き嫌いが減らないときは?遊びの中で経験と感覚を養おう

2022.06.14

子どもの好き嫌いを減らすために料理を工夫し、食事中に意識して声かけをしても、なかなか食べてくれないと悩む方は多いですよね。子どもが食べられるようになるには、良い経験と身体の感覚を養うことが必要です。本記事では、食べる力の背景と、それを養う具体的な遊びについて解説します。食事場面だけでなく、遊びや生活で養う力に着目してみてください。

食べ物の好き嫌いの理由①未経験

子どもが食べ物の好き嫌いをするのは、人間が本能的に経験したことのない食べ物を警戒するためだと言われています。

動物は生きていくために体内で作れない栄養素を植物や動物などから取り込みますよね。同時に、その中から毒性や侵害性があるかもしれないものを本能的に判断します。そのため、見たり食べたりしたことのない未経験の食べ物に対して、警戒心を持つ傾向があるのです。大人が「おいしいから大丈夫」と言っても、警戒心が勝ると食べることができません。幼い子どもの場合は言葉の意味を正しく理解できていない可能性もあります。

また、悪い経験が重なると食べ物を嫌いになることがあります。食べたときに嘔吐した経験があると次から食べられなくなる、といったものです。一度嫌いになると、なかなか改善されないと言われています。

このような理由から、好き嫌いの背景には人間の本能が深く関わっており、色々な物を食べられるようになるには良い経験が必要だということがわかります。

 

食べ物の好き嫌いの理由②感覚

色々な物を食べるには、身体の感覚をバランス良く調整できなければいけません。
具体的には、以下のような感覚が、食べることに深く関係しています。

  • 視覚:食べ物の形状を捉え、食べられるか判断します。視覚が過敏な子どもの場合、食べられるものでも形状を変えると同じものと認識できず、食べられないことがあります。見た目や色で味を連想し過ぎて食べられない子どももいます。
  • 体性感覚:触覚や深部感覚などです。食べ物の舌触り、感触、硬さ、温度などを感じます。(口に入れたときの感覚を口腔感覚と言います。)ぐちゃぐちゃ、ねばねば、バリバリなどの感覚が苦手な子や、熱いものを極端に嫌う子もいます。
  • 聴覚:噛んだときの食材や身体の音を感じます。聴覚過敏があると、食べ物を噛むときの音が気持ち悪いと感じます。
  • 味覚:基本味(甘味、塩味、うま味、酸味、苦味)があり、その中でも酸味は腐敗物、苦味は毒性につながるため子どもは本能的に避ける傾向があります。味覚は成長と共に変化し、酸味や苦味を受け入れていきます。(大人になったらコーヒーが美味しく感じたなど。)酸味を感じやすい子や、味覚を感じにくく味の薄いものが食べられない子もいます。
  • 嗅覚:食べ物の臭いを感じます。生臭さや青臭さを強く感じて嫌う子がいます。

食べる=味覚と思いがちですが、実は食べるときにはたくさんの感覚を使っています。食べる力を育てるためには感覚をバランス良く調整し、食べることへの不快感を感じないことが大切です。

特に感覚が過敏な子どもの場合、味だけでなく食感や臭い、温度、形状、硬さや噛んだときの音などを強く感じてしまいます。不快に感じると食べ物に関しての嫌悪感も強まり、好き嫌いが多くなる傾向があります。これらを我慢して食べるだけでは不快感を強めるだけで好き嫌いの改善にはなりにくいでしょう。

 

遊びの中でできる工夫

上記では、子どもが食べる力を身につけるためには、良い経験や感覚の調整能力が重要なことを解説しました。

本章では、子どもの具体的な遊びや生活場面の中で、経験や感覚の力を伸ばす工夫を紹介します。

感触遊び

感覚を使った遊びの代表が感触遊びです。感触遊びの具体例は、布遊び、紙遊び、粘土遊び、絵の具遊び、砂や泥遊びなどです。

感触で遊ぶことと食べることは、「特定の感覚を受け入れる」という共通点があります。視覚で形状を確かめて、手や身体に触れ、感触を受け入れる遊びができるようになると、色々な食材を受け入れる力が付いてきます。

中には、特定の感触を嫌ったり、極端に汚れることを嫌う感覚過敏を持つ子どももいます。離乳食が唇に付くことを嫌がったり、手掴み食べができなかったりして、食事の場面でも困難が見られたかもしれません。感触遊びでは決して無理強いせず、近くで見る(視覚的に参加)、道具ごしに触る(筆で絵の具を触る、ビニール袋ごしに粘土を触るなど)、自然と身体に触れた感覚を受け入れる、といった段階を踏むことが大切です。また、苦手な感覚と好きな感覚を同時に入れる(布で包みながら高い高いやジャンプをするなど)と、苦手な感覚を受け入れやすくなると言われています。

感触遊びの中で、「苦手な感覚を受け入れられた」という成功経験をすることが、嫌いな食べ物を好きになることにつながります。

また、感触遊び同様に、食事場面で食べられないものがあったときも、近くで見る、スプーンで触る、手で触る、口に付ける、好きな味と混ぜて食べると言った段階を踏むことで、食べられるようになることがあります。

野菜作りやお料理活動

動物は本能的に知らない食べ物に嫌悪感を持つため、野菜作りやお料理活動をすることで、好き嫌いが改善することがあります。楽しみながら食べ物について知り、手に触れ、食べてみるという体験をさせると良いでしょう。体験を食事場面につなげることができる年齢の子どもに有効です。特に警戒心の強い子どもは、言葉で説明されるよりも体験から学ぶことが大切です。

集団活動

保育園や幼稚園では、お友達と一緒に遊びをしたり、相手を意識したり、チームになったり、一つの活動に取り組んだりします。家族とは違い、頼り合ったり競い合ったりする相手を作ることが、食事の場面にも役立ちます。仲良しのお友達が美味しそうに食べていたから、ライバルのお友達と競い合っていたからという理由で、親がどんなに勧めても食べられなかったものが簡単に食べられることもあります。家庭で全て解決しなくても、集団の場だからこそ経験を重ねられる場合があるため、焦らず見守っていきたいですね。

 

まとめ|好き嫌いの改善には食事場面だけでなく遊びや生活に注目しよう

好き嫌いを減らすために、かわいく装飾をして料理したり、なぜ食べなければいけないか説明したりして、食べられるようになる子どももいます。しかし、中にはそれでも食べることができない、嫌いなまま我慢しているという子もいるのです。そのような場合は、食事場面だけでなく、経験を深め感覚を養う遊びに注目してみると良いでしょう。実は経験や感覚は食べる力につながっています。工夫しても好き嫌いが改善しないと悩む方は、ぜひ参考にしてみてください。

参考:大阪大学大学院人間科学研究科行動生理学研究分野 助教 乾 賢
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/10/74-9-12.pdf
https://otonanswer.jp/post/60473/